【研究ニュース】「田んぼでも雪上でも走行可能なキューボード」(日テレNEWS24/Yaghoo!ニュースより)

<どこでも走れるキューボードと新潟の院生の話題>

1.はじめに 

先週、ネット上で話題になり、私も欲しいと感じた新潟県の大学院生の開発したものがありました。次のオンラインニュースに、動画付きで紹介されています:

動画を見たところ、スケートボードにキャタピラーのようなものを付け、状態の悪いところも走れるようにした乗り物のようです。ネット上の反応の一部は、次のTogetterまとめでうかがえ、様々な可能性が示唆されていました。

(人が乗って動く様子は、リンク先のTogetterまとめや、オンラインニュースをご覧ください)」

今回は、このキューボードについて、開発し、どうやら販売する会社をされる大学院生・寺嶋さんの二ュースを紹介していきます。



2.「誰も歩かないような所を走っていくようなも」を作る~「田んぼでも雪上でも走行可能なキューボード」(日テレNEWS24/Yaghoo!ニュース)

 2-1.キューボードって、どんなもの?

オンラインニュースを読んでみると、キューボードのことがどのようなものか、概要が分かるように紹介されていました。雪や砂利道、芝生はいいとして、田んぼの中を走っている時は、イネを傷つけないか、心配してしまいました。それはともかく、このキューボード(Cuboard)は、どこでも走れる乗り物だそうです。


「スケートボードに建設機械や戦車を駆動するクローラーという“キャタピラー”を取り付けた乗り物だ」という説明に関しては、先のtogetterまとめのほうで、「「クローラーというキャタピラー」に強い違和感を感じる」というコメントがありました。機械にうとい私が調べたところ、乗り物に使われるクローラーとは「無限軌道」とも呼ばれるものであり、Wikipediaによると、

起動輪、転輪、遊動輪(誘導輪)を囲むように一帯に接続された履板(りはん・りばん)・シュー (Shoe) の環であり、起動輪でそれを動かす事によって不整地での車両の移動を可能にするもので、この種の車両を装軌車両 (Tracked Vehicle) と呼び、対して通常のタイヤ車輪を備えた車両を装輪車両 (Wheeled Vehicle, Car etc) と呼ぶ

ものだそうです。確かに、ニュース記事の説明では、同じものを指す言葉が重なっていて、違和感はあります…。


さて、Wikipediaの説明では、キューボードは「装軌車両 (Tracked Vehicle) 」に入るようです。ブルドーザーと同じく、

車輌の重量が履帯全体にかかるために接地面積あたりの圧力(接地圧)が小さくなり、柔らかい地面や雪上でも沈み込みにくくなる。また多少の起伏や穴なども履帯越しに転輪が通るためにスムーズに通行することができる。」(Wikipediaより)

といった仕組みで 、凸凹だったり、湿ったりした場所も走れるんだとか。ブルドーザー等の工事車両は、乗り物に幅があり、私は安定しているイメージを持っています。一方のキューボードは、細長いスケートボードの下に無限軌道が付けられています。乗りこなすにはセンスが必要そうだと感じていたら、先のまとめにも「でも、スケボーは高齢者には危険だから、いっそのこと車椅子につけるとかしたらいいんじゃなかろうか?

というコメントがありました。


 2-2.開発者ってどんな人?

動画のなかでキューボードに乗ったのが、開発者の寺嶋さん。新潟県の院生であり、どうやらキューボードを開発・販売する会社の代表者でもあり、ニュース記事を読んだだけでも、好奇心の強さがうかがえる方でした。


キューボードの特徴からして、豪雪地帯の新潟でないと生まれなかった、というのには納得です。それを差し引いても、寺嶋さんは「誰も作ったことがない、誰もやったことがないことをするのが大好きなんですよね」と仰っているところから、私は「キューボードでなくとも、この院生、何か面白いもの、作りそうだ!」という、よい意味でヘンテコな研究者というオーラを放ってそうな気がしました。

ニュース記事では、寺嶋さんは「長岡技術科学大学大学院生」であり、 動画では「CuboRex 代表」と表示が出ていました。「

雪国の学生が発明した「田んぼでも雪の上でも走行できるスケボー」に「めっちゃ欲しい」の声が集まる - Togetter

」では、Twitterでコメントを寄せておられましたので、

ご自身のプロフィール

をのぞいてみました。


CuboRexは株式会社のようで、寺嶋さんは代表取締役をされているようです。もともと、高専のご出身のようで、学生ロボコンに出場経験があることが窺えます。オンラインニュースで「クローラーをキャリーケースや、ソリに取り付けた新商品も開発している」とか、「スキー場などアウトドア施設での利用を見込んで開発したのだが、農業事業者や介護事業者からの問い合わせもある」と、開発や需要について書かれていました。このあたり、Twitterのタイムラインによると、渋谷にて人ごみでのスケートボード状の乗り物は危ない、と警官に寺嶋さんは質問された上、「これほしい!いくらで売ってるの?」と尋ねられたようです。どうやら、警官の方にも営業することになったそうで、成り行きからして、私は寺嶋さんにお目にかかって話を聞いてみたいなぁ、と思いました。



3.最後に

どんなところでも走り抜ける!道なき道を行く!そんなことを目指して開発されたキューボードは、発想のもとは豪雪地帯の新潟ならでは、のようです。しかし、開発されるには、寺嶋さん自身の好奇心が強くて、「誰も作ったことがない、誰もやったことがないことをするのが大好き」なところがなければ、製品化まで至っていなかったと思われました。

このキューボード、実用性に優れ、実際に路上で目にした警官からも問い合わせがあったほどの製品です。新製品の開発は続いているそうですので、気になる方、これに乗って移動中の寺嶋さんを見かけた方は、お声をかけてみられてはいかがでしょうか。

おしまい。

なかみ博士の学術系問題研究所

仲見満月(なかみ・みづき)が院生や研究者とその周辺の問題を考えるサイト。学術系ニュースの同人誌、発行しています。